H18 再現答案(意匠)■意匠法(4ページ) 評価:A1.設問(1)について (1) 総説 BがAの時にしたものとみなされるためには、出願変更の要件 (13条1項)を満たす必要がある。 (2) 出願変更の要件(13条1項) 1 特許出願Aの特許出願人である甲が出願変更しなければならない (13条1項)。 この要件は満たされている。 2 Aの出願当初の明細書、図面等にロの一部の取付部分の形状と 同一のものが含まれている必要がある(13条1項)。 ここで、意匠は物品の外観に係るものである必要がある (2条1項)。 当該取付部分が外観として視認できない場合には、Aの明細書、 図面等に記載されていない可能性が高い。 よって、Aの明細書、図面等にロの一部の取付部分の形状と 同一のものが記載されていない場合は、本要件を満たさず、 BはAの時にしたものとみなされない。 一方、Aの明細書、図面等にロの一部の取付部分の形状と 同一のものが記載されている場合には、BはAの時にしたものと みなされる。 3 拒絶査定謄本送達日より30日経過前に出願変更する必要がある (13条1項)。 よって、これを満たし、前述の視認性の要件を満たしていれば、 BはAの時にしたものとみなされる。 2.設問(2)1について (1) 侵害とは、権原又は正当理由なき第三者が業として登録意匠 若しくはその類似意匠の実施、又は一定の予備的行為をすること をいう(23条、2条3項、38条)。 (2) 甲によるαの輸入及び販売が乙のニに係る意匠権の侵害となるか 1 類否判断 意匠の類否判断は、物品と形態に基づいて行われる。 甲のαと乙の意匠ニに係る物品は、「熱交換器」で同一である。 αの形状とニの形状は同一であるので、模様、色彩の差異点が当業者 にとってありふれた範囲のものであれば、両者は類似する。 よって、両意匠は類似する。 2 甲の輸入販売行為は業としての実施である(2条3項)。 3 よって、甲の当該行為は、甲に権原等なければ、形式的に、乙の ニに係る意匠権の侵害となる(23条)。 (3) 甲によるβの輸入及び販売が乙のニに係る意匠権の侵害となるか 1 甲のβは「冷蔵庫」であり、乙の意匠ニに係る物品である 「熱交換器」であることから、機能・用途が異なるため、両物品は 非類似と考えられる。よって、甲の当該行為は、乙のニに係る 意匠権の侵害とはならない(23条)。 2 なお、βにはαが内蔵されているが、外部からは見えないように なっているので、利用関係(26条)ともならない。意匠は物品の 外観に関するものであるからである(2条1項)。 (4) 乙によるγの製造及び販売が甲のハに係る意匠権の侵害となるか 1 類否判断 部分意匠の類否判断は、以下の4つの事項に基づいて行われる。 (i) 意匠に係る物品 γと部分意匠ハの物品は、「熱交換器」で同一である。 (ii) 部分意匠に係る部分の機能・用途 取付部分の機能・用途は共通と考えられる。 (iii) 部分意匠に係る部分の位置・大きさ・範囲 差異が当業者にとってありふれた範囲内であれば類似する。 (iV) 部分意匠に係る部分の形態 γの取付部分の形状とハの形状と同一である。 よって、模様、色彩の差異が大きくなければ、類似する。 以上の要件を満たせば、両意匠は類似する。 2 乙の製造販売行為は業としての実施である(2条3項)。 3 よって、乙の当該行為は、乙に権原等なければ、形式的に、 甲のハに係る意匠権の侵害となる(23条)。 2.設問(2)2について (1) 甲の取り得る法的手段 甲の出願は乙の出願に対して先願であり、先願優位の原則により、 甲のαの輸入販売行為は、自己の登録意匠の実施として、乙のニに係る 意匠権によっては制限されない(23条)。 よって、甲は、自己の意匠権に基づいて、非侵害である旨主張 できる。 (2) 乙の取り得る法的手段 γにおいて外部から部分意匠ハが視認できない場合には、γを 実施しても、部分意匠ハの実施とはならないから、乙は非侵害の旨 主張できる。意匠は物品の外観に係るものであるからである (2条1項)。 以上 |